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地上デジタルは順調な滑り出し

いよいよスタートした地上デジタル放送。地上デジタル放送の普及を推進する(社)地上デジタル放送推進協会=DPAの芳賀讓専務理事に現状やこれからの展望などを聞いた。聞き手はCBA代表 伊澤偉行氏。DPA会議室にて。

http://www.d-pa.org/
芳賀讓専務理事
   
 
(社)地上デジタル放送推進協会(略称:D−PA) http://www.d-pa.org/
〔目的〕 地上テレビジョン放送の円滑かつ迅速なデジタル移行と安定的な運用を図るため、デジタル放送の普及に努めるとともに、これに関する事業を実施し、地上デジタルテレビジョン放送の発展を推進し、もって公共の福祉の増進に資することを目的とする。
〔事業内容〕 1.地上デジタルテレビジョン放送及びその受信の普及促進
2.地上デジタルテレビジョン放送に関する調査・研究
3.地上デジタルテレビジョン放送の送・受信技術に関する規格化の推進
4.地上デジタルテレビジョン放送のエンジニアリングサービスの運用及び関係事業者等との連絡、調整、契約に関する業務
5.地上デジタルテレビジョン放送番組の著作権保護に関する関係事業者等との連絡、調整、契約に関する業務



■滑り出し「放送は健闘した」
伊澤 今回の地上デジタル放送のスタートでは、ケーブルの視聴可能世帯が、710万ということで、今後の普及に向けて幸先の良いスタートではありませんでしたか。
芳賀

もちろん、空中線で受信していただくようにできることがベストですが、都市部とか中々受信できにくいケースがたくさんあります。今は都市型ケーブルだけで1600万世帯、他の難視共聴施設などを入れると約2600万。日本の全世帯4800万の54%は、何らかの意味でケーブルで視聴されているのですから、その受信インフラで、地上デジタル放送が再送信できるかどうかは無視できません。さらに、日本全国津々浦々、普く地上デジタル放送を普及させますといったときに、やはりケーブルも重要な位置を占めますね。

伊澤

スタートダッシュには、どのような感想を持たれていますか?

芳賀

こういう物の普及は、二つの側面から見るべきだろうと思います。一つは、放送コンテンツがどれだけ地上アナログと差別化、差異化があったかという事と、実際の受信機がどれだけ売れたかという両方から。
普及そのものの決定的な要素としては、良いコンテンツとお求め安い価格の受信機の発売にあるわけですね。その後、受信インフラということで送信だとかケーブルが勿論あるわけです。その二大要素のところから見ますと、私は、「放送は健闘した」と評価しています。

というのは、まだ受信エリアが限られていますでしょう。東名阪合わせて1200万世帯。受信機の発売・普及台数が、極めて少ないところからスタートしているわけです。特に、東京の民放9局さんのカバレージが12万世帯。そういうところから言うと、やはり各放送局とも地上デジタル放送を事故なく放送していくと。準備期間も短いし、実際の電波を出して実験放送をやっていくということができない。

CSさんとかBSデジタルの場合は、別にそれを出していても既存のアナログ放送に害を与えないわけで、試験放送をなんぼでもやっていけるわけです。

ところが、今回の場合はそれをやると大変なことになります。夏場、一時、深夜に止めてやったことがありますけれども、それ以外は実際にできない。そういう意味から言うと、各放送局は、先ず事故なく地上デジタル放送をキチンと放送することに力を注いだ。そういう意味では、非常に静かなスタートかなと思います。

それから、ハイビジョンはご存知のように、3つほどの民放キー局さんでお使いになったソフトウェアに不具合があり、ピュア・ハイビジョンでの送出が不可能になりました。そういうことはありましたけれども、基本的にデータ放送を附加するとか、双方向番組にトライするとか。そういうところは、私は大分キチンとおやりになられたのではないかと思います。特に、大阪、名古屋の準キー局と言われるところ、NHKの大阪放送局、名古屋放送局ですが、ここは地上デジタル放送ならではの地域性を活かした放送のトライというものを、非常に大胆におやりになったのではないかと思います。例えば、大阪毎日放送はマルチ放送にチャレンジされて、あそこは板東英二さんのショッピング番組があります。「坂東英二欲張りプラザ」という10分の帯番組で、10分間に2つほどの商品を紹介するテレビショッピングです。これをマルチ放送したんですよ。メインチャンネルで生で放送します。そうすると、その脇に「サブチャンネルでもうひとつの商品紹介を行っています」という表示をして、お客さんがサブチャンネルを見ると、既存の同じ欲張プラザの中から好評だったもの、売れそうなものを流しているわけです。そうすると、同じ10分間の中で商品紹介が2倍できるでしょう。スポンサーは同じです。マルチチャンネルというのは、視聴者を二分して視聴率が二分されるから、下がった分だけ広告収入が落ちがちで、なかなか民放さんだとやりにくいという側面を持ったりしています。そういうことを同一スポンサーで、しかも視聴者にもスポンサーにも喜ばれる方法をやった。

名古屋は、朝3時から4時にかけてのニュース番組で、BBCの前日夕方、現地だとその日の夕方のニュースを日本語の同時通訳付きで流す。同時に、もうひとつのサブチャンネルで「ヨーロピアンジャーナル」というドイチェベーレのニュース番組を、英語で通訳を付けずに流す。要するにスポンサー無しで、サスプロなんですね。スポンサーに縛られないというか、あまり広告収入に影響のない時間帯に、ニュースの選択肢、バリエーションを増やした試みをやった。それから、これは名古屋が多いのですが、休日・夜間診療所案内。これは非常に好評のようですよ。 これは医師会や自治体とタイアップしてやっています。それから、高速道路等の工事・帰省・渋滞案内をデータ放送でやっています。デジタル放送スタート時にしては、各放送局が非常にデジタルならではのメリットを謳ったものに対して、大胆に挑戦をしていただいています。


■受信機は1月末で53万台
芳賀 受信機の売行の方は1月末で53万台。特に、大画面フラットディスプレイ。PDPだったり液晶だったりしますが、まだまだかなり高額だとは思うのですが、その割には好評で売れていますよね。私は、明日福岡に行って話しをすることになっているのですが、福岡の電器屋さんの声を聞きますと「売りたいときに商品がなかった」と言っているんですね。要するに、足りないものだから放送をやっているところに集中出荷したみたいですね。「うちには放送しなくたって買いたい人がいっぱいいるんだ。早く出してくれれば早く売れる」と言ってました。
伊澤 九州東北で売れたという話しですね。
芳賀 そうなんですよ。商売の時期というのは、不思議な流れがあるじゃないですか。ウワッと来たとき商品がないと。欠品にしていると、後に取り寄せたからといって売れるかというと、そういうものでもないのですよね。コンビニやスーパーなんかでもそうですけどね。波に上手く乗って、スッと品揃えをしておくとスポーンと売れる
伊澤 勝ち組負け組現象で、今買える人というのは「勝ち組だ」とアピールしたいのかなとも思うのですが
芳賀 そういうことから言うと、私は非常に順調なスタートが切れたと。勿論、空中波に加えてケーブルさんが700万というカバレージ。やはり、非常に意欲的に取り組んでおられると考えますね。ケーブルさんで、相当これを機に加入者を増やしているところがお在りになると聞きますよね。
伊澤 首都圏では、イッツコムYOUテレビなどが代表的ですね。
芳賀 今は、地上デジタルの放送区域が限られているから尚更じゃないですかね?これが第二次増力、第三次増力で今のアナログと同じだけのカバレージになると、ケーブルさんで見るか個別アンテナで見るかとか、そういう費用対コストのことを考えてしまいますものね。やはり時期が早いというのが、ひとつ大きな「売り」なんでしょうね。
伊澤 今のうちに取込んでおいてということですね。
芳賀 一端取込むと、テレビだけの話しではありませんからね。インターネットとか電話という商売をされているわけですから。
伊澤 NHKの朝の連ドラの前に色々PRが入るじゃないですか。あれも効いたんじゃないですか? 民放の広告費にしたら幾らだろうと。
芳賀 良い時間帯に、あれだけの時間と回数をかけてアピールしてご理解いただく。早く全体をデジタルに移行させていく上では大切な情報提供だと思いますね。
伊澤 滑り出しの53万台というのは、日本のこういった物の売行としては良いのでしょうか?
芳賀

ええ。生産ラインがフルパワーで稼働できるようになるのは、来年夏で2005年。年間1000万台の生産ラインができるわけです。受信エリアが限られていますから。一番売れているのは名古屋でしょう? 名古屋が一番。今年中にはフルパワーになるわけですからね。

BS等の普及は、日本全国一律で受信できる条件で「せいの!」のスタートです。それと、受信エリアが地域限定の地上デジタル放送とでは比べようがないですね。その中で、僕は53万台は悪くないなと。


■アナ・アナ変更の進捗状況がフルパワーの時期に影響
伊澤

夏にアテネオリンピックがありますね。ケーブルもこの機会に色々キャンペーンをやっています。

受信機の普及は、モノクロの時は皇太子ご成婚がありましたけれども、今度はアテネオリンピックがあり、2006年にドイツワールドカップがありと色々ビッグ・イベントが続きますね。その辺のひとつ大きな目標数値を教えてください。

芳賀

全国会議の第四次行動計画で言いますと、実はアテネオリンピックのところはチェックしていないんですよ。次の2006年のワールドカップのところで1000万世帯、1200万台の普及を見込むと。それから、2008年の北京オリンピックのところで、2400万世帯、3600万台の普及を見込むとなっているわけです。

これはちょっとワケがあるわけです。今年のアテネオリンピックまでのところで、どれだけアナ・アナ変更対策が進行するかということに左右されるんですね。それが済んで初めてパワーを増力できるわけですから。そして視聴エリアを拡大できる。

そのアナ・アナ変更対策が終わらなければ、増力すると他の既存のアナログ放送に受信障害を起こすわけですからできないわけです。だから、そこの進行を見ないといけない。

増力が何時になるかですよね。お客さんとしては「もうアテネオリンピックがあるじゃないか?」と。我々もそう思うわけです。だから、それまでに増力できていれば物凄くありがたい。しかし、本当にそこまでできるのかというと、物理的な、むしろアナログ変更対策の計画をどれだけ繰り上げて実施できるかというところにかかってくる。一所懸命やっておりまして、この計画自体は順調に進んでいる。だけど、それを繰り上げてまでできるかどうかというのは…。

伊澤 人の手によってコツコツやる作業ですからね。
芳賀

アナ・アナ変更が難しいのはね、ちゃんと訪問する日時を決めて、合意した日に行かなければならないんですよ。闇雲に行って、勝手に屋根に上がったり、家の中に入れないでしょう? 特にお嬢さんの個室にあるテレビのチャンネルプリセットは触らせてもらえないとか。非常に難しいと言っていましたよ。あれはね、戸別訪問手作業なんですよ(笑)。「せいの!」と言って、パッとやってしまおうという風には、なかなかなりにくいところがありますよね。

そういう意味で、アテネは大変大きなポイントではある。


■3波共用受信機の普及をいかに加速させるかが課題
芳賀 地デジテレビというのは3波共用テレビなんですね。BSデジタルも、CSデジタルも、勿論今のアナログも。だから、今は(地上デジタルは)受からないけれども、どうせBSデジタルでも、地上の例えばNHK総合でも、アテネオリンピックはいっぱい放送するわけですよ。「それでご覧になっていれば良いではないですか」と。「地デジはまだ放送エリアではないけれども、今買い替えるなら、もう3波対応テレビですね」という意味で。受信機だけの普及でしたら、私は普及促進の方法はなんぼでもあると。
伊澤 自然の買替え需要というのは、これまでもあるわけですからね。それをちょっと加速させると。
芳賀 ええ。年間大体900万から1000万。二、三年前くらいに750万位に落ちたことがありますが、大体900万から1000万です。老朽更新していきますから。

デジタルに買い替えてもらうと考えると、自然買替え需要だけでは、実はデッドエンドというか2011年初頭までには8割しか転換できないのです。従って、何らかのプロモーションをすることにより、二割方上げていかなければならない。

その時に、ご指摘のように国民的大行事とかスポーツイベントは大きいですよね。だから、今度名古屋の愛知万博とか、国内的にいったら、あれも大変な普及促進の刺激になると思っています。「地上デジタル放送は始まるけれど受信機は?」という売り方はやらなければならないと思います。

地上デジタルの普及・促進をする団体でありながら、実はBSデジタルやアナログでも放送しますということを十分踏まえて「今買っておいても損はないです」と。もうテレビメディアとしては、これから飛躍的に変わらないじゃないですか、でしょう? もう安心メディアになっちゃったんですよ。

前は「110度CSがある」とか、「いや、BSデジタルだ」とか、「いや、地上デジタルも始まる」と。そうしたら「その度にチューナーを買ってぶら下げていくのか?」と。「やってられないね」と。「もう少し様子をみようか?」になったでしょう? もう今は様子をみる必要はないですよ、三波共用ですもの。ここ暫くは変わらないでしょう。唯一、移動体通信、携帯電話とか何か。だけど、これはハードが違いますからね。ダブらないじゃないですか。ちょっと、アテネオリンピックのところの使い方、アピールの仕方というのは知恵がいりますね。

伊澤 後は、メーカーが安いものを出してくるかという話しですね。
芳賀

やはり商品企画ですから、大型のフラットディスプレイで売れているうちは開発費用も掛けているでしょうから、そういう部分の回収も含めてメーカーさんはメーカーさんで、商品企画を神経磨り減らして考えているんじゃないですか?

でも、下手をして他のところに出し抜かれても困るという。ただ、ひとつのヒントは、今ある1億2000万台のテレビのうち、サイズで見てみますと21インチ以下のテレビが約60%。26インチまで含めても78%なんです。

今大きいものが出ているでしょう? ですから、今後の商品企画として、サイズは値段にも反映するわけですから。しかも、居間だけのテレビではなくて書斎、寝室、子供部屋、そういう個別の部屋に置くものを、全部50インチや30何インチという必要はないわけです。

そういうお求め安いサイズ・価格、場合によっては機能ですね。そういうところも含めた、様々な商品企画の幅が出てくると、私は値段も下げられると。そこに、何時どのメーカーさんが先頭切って踏み込まれるかですね。

私共が僭越になかなか言えないことで、むしろ放送局さんが「買い求めやすいテレビを開発してね」とよく言いますよね。


■デジタルならではの新サービスをいかにPRするか
伊澤 冒頭でおっしゃられたように、デジタルの受信機が小型化されて入っていき、後は放送側の普及を加速させるようなコンテンツというものですね。
芳賀 そうですね。僕はデジタル放送とか副音声も使いながら、所謂ハンディキャップを持つ人に対して優しいテレビというのかな? 今の3波共用テレビの中には、文字放送は実は標準装備として入っているわけですね。文字放送は、総務省も、NHK、民放とも増やしなさいと指導しているわけですね。NHKはほぼ100%になっているのかな? 民放さんも相当努力されているでしょうから。大体、今ニュースでも何でも、喋ると下に字幕が同時に出てくるでしょう? あれで、所謂耳の不自由な方も分るわけですよ。
伊澤 耳の遠くなった人もそうですね。
芳賀 そう。耳が遠くなった人のためにはですね、実は話速変換装置バックノイズを抑えるものと、二つのサービスが今準備されているんです。耳が遠くて聞きにくいというのは、どうも喋りはじめが速いらしいのです。それで良く聞き取れない。喋りはじめだけをちょっとスローにしてあげて、その分だけ話しと話の合間で吸収するという方法にする。これは話速変換装置といって、既にラジオでは売り出されています。これをやると非常に聞きやすくなる。
伊澤 あれは売れているみたいですね。
芳賀 ええ。隠れたヒット商品ですよ。
伊澤 2年か3年前のNHK技研で。
芳賀 技研でやってましたでしょう? もうひとつ大きいのは、僕なんかもそうなのですが、家でテレビを見ていると、どうしても音を大きくしがちなんですね。何故かというと、喋っているのと後ろの音楽とか何かのバランスがよく分らないから、喋りを聞きたいと思うと上げるわけです。するとバックノイズも上がるでしょう? 悪循環なんですね。ところが、今度はそれを受信機側で調節できるんですよ。
伊澤 それは凄いですね。
芳賀 凄いでしょう? そうすると、バックノイズを少し抑えてメインの音声を上げれば非常に聞き取りやすいではないですか。そういうふうに今進んでいるわけです。もうひとつ、今度は目が不自由で見えないという方々に対しては、副音声で解説放送があるわけです。NHKの連続テレビ小説かな?既にやっています。「なんとか帰ってくる。玄関を開けて入ってくる」とか。「ただいま。なんとかさん、?」と普通のドラマのセリフが入っているわけですね。その場面を解説したほうが分かりやすいときは、短いセンテンスで、音声で解説をするわけです。そういう解説放送というのがあるわけですね。それがこのデジタル放送で進んでいくわけです。そうすると人に優しい、聞きやすく、見やすいテレビになってくるわけです。
伊澤 そこら辺は、あまり一般に大々的には理解されていないですね。
芳賀 これは理解されていない。この事は、今後日本が高齢化社会になっていくわけですから、意外と私は売りになると思います。
伊澤 たしかに。
芳賀 下手に遺産で残して子供たちが喧嘩するよりね、大画面の一番良いテレビを買って楽しむ。だってね、テレビ視聴時間というのが、お年寄りにとって一番長時間なんですよ。平均だと3時間10分かもしれないけれども、高年齢になっていけば4時間にも、5時間にも、6時間にもなるんですから。元なんて、アッという間にとれるんですよ。
伊澤 地方の電器屋さんに聞いたのですが、売り方が「婆ちゃん、冥土の土産話だぞ」というと、納得して買っていくと。
芳賀 今はもう置いてくると言っていましたよ。「これ、一ケ月貸すから。只でいいから見てて」と言うとね、もう離さないと言ってましたね。
伊澤 正しい売り方ですね。
芳賀 「これは良いね」と感謝されるというのですからね。

■地上デジタルの大きな特長の一つはゴーストがないこと
伊澤 日本では、総人口の半分くらいが集合住宅に住んでいると。BSアナログが始まるときというのは、NHKの受信技術の人が用意周到な作戦でやったじゃないですか。当時は、これほど早くデジタルが来るとは思っていなかったですからね。今は、マンションをどうするかというのが非常に大きな問題ですね。
芳賀 ええ。テレビというのは、基本的な要素ですからね。マンションが改修不可能な場合があったり、人的に不可能というより理事会で賛成が得られないというのがあるじゃないですか。
伊澤 そうなると個別のアンテナで受信するという話にはなるんですよね?
芳賀

どうしても組合が賛成しなくて、そういうインフラが無い、ケーブルさんにもなかなか入って貰えないというような時に、個別アンテナ、室内アンテナで反射波を拾いながらということは有りうるかもしれませんね。それでも受信できるところとそうでないところ、幾つかあるでしょうね。

デジタルというのは、わりあい、反射波であろうと何であろうと拾ってひとつの画を合成していきますから。今までは、反射波が入ってくるとゴーストになります。しかし、デジタルは、反射波を拾ってこれを一緒に合成するということができるんですよ。

伊澤 NHKの技術の方に聞くと、一番のメリットというのはゴーストが無くなることだと。
芳賀 反射波をプラスに活かしちゃうんですから。今まではゴーストだから排除しなければいけないでしょう。それを取込むんです。取込んで、良い画にしちゃうんです。四方八方から来たって、良いんですよ。
伊澤 お前は仲間だといって
芳賀 そうそう。OFDMという。僕はあまり技術的なことは分りませんけれども。そういうものを取込んで、ひとつの映像にするという話です。

■電波の届きにくい地域をどうするか
伊澤
2011年を思うと、山奥はどうするのかなと。この間、四国の徳島に行ったのです。その晩、徳島の飲み屋で、「どこか良い観光地はないのですか?」と話していて、観光マップを見せてもらった。四国の山の中は凄いんですね。「ここテレビ映るんですか?」と聞いたら、「そりゃ、テレビくらい映りますよ」っていってましたけど、私は、心の中で<それはアナログの話でしょう。デジタルになったら、あそこまでどうやって信号を引っ張っていくのだろう?>と考えていた。NHKは「あまねく」でやらなければいけない。そこら辺は、どうなるのでしょう?   伊澤偉行
芳賀

そこはラストワンマイルというか、空中波でカバーするのか、それとも有線なのか。光ファイバー等になっていれば一番言うことはないわけですけれども。そういう物を通して、共通のインフラとしてのものが必要になりますね。単体で、それをひとつの目的で使うというのは物凄く非効率ですよね。光ケーブル、シングルモード光ファイバー。電話だろうがインターネットだろうが、共通のインフラとして使えるわけですよ。最後のところをどうするかということは重要なポイントです。

アナログの放送の普及でも、格差是正事業で、山間僻地に民放さんのテレビ中継塔が建たないとすると、国の補助事業、地元の町村で建物と施設を造り「造りましたから、民放さん、ここへ進出して下さい」ということでやったわけです。「アナログでやっておいて、デジタルでやらないのか?」ということはありますね。

伊澤 そこが、「予算が無い。事業者頑張れ」でお終いみたいな感じもして。
芳賀

今までは30年かけて中継所を造ってきたんですよ。その年数と、人手と、お金を掛けてジックリやって来たわけです。

今度は8年足らずですよ。そういうところでやるんですから、やはりアナログの時に補助したようなことを、更に倍にするとか3倍にするとか、何らかのことをお考えにならないと中々難しいと個人的に思っていますけれど。これは、大事業ですよ、そういう意味で、そういうご理解は得られるでしょう?

伊澤 国家事業ですからね。
芳賀 アナ・アナ変更対策も、アメリカは一切必要ない。日本は、電波が混んで過密になっているから、Uを使ってポンとやったら受信障害を起こして、次々玉突きになる。そういうことをしないためには、最後のところから反対に変更していくわけです。日本では、そういう手間暇を掛けたことをやらなければいけなかったわけです。
伊澤 有明海周辺とか。
芳賀

瀬戸内だって有明だって大変ですよ。本当に数百の単位のところを全部メンテナンスしていかないといけないでしょう。ただ、瀬戸内等で非常に問題なのは、島のどちら側かによって、実は行政の仕切りと電波を受けるものが一致していないところがありますよね。例えば、静岡の伊豆半島は、こちら側は東京の電波が来たり神奈川の電波ですよね。だけども、行政区域は静岡県です。だけども、静岡県のテレビを有線で引いて見たいというよりは、むしろ静岡側にいる修禅寺の方が「ケーブルテレビで、山のこちら側の東京のテレビを引いてきて見せてくれ」という要望の方が多いのでしょう?

島のこちら側は岡山のものが見られる。島のこちら側は高松のものが見える。だけども、「できれば、あちら側で見えているものを、こちら側でも見せてよ」という話しになるわけでしょう。非常にそういうところでは放送サービスが難しい部分があります。あそこは、特に大阪の電波も届いたりしますからね。徳島や高松は、大阪の電波も見られるじゃないですか。だから、あそこは電波銀座ですよ。恵まれた地域というか、難しい地域というか。

免許条件の放送エリアと現実は、乖離するところが出てくるわけでしょう。乖離しても、長年そこに住んでいる人にとっては既得権益としてそういう物が見られる。多チャンネルが実現するわけですから、それが良いに決まっているわけです。それがある日突然「はい、駄目よ」と言われたら「どうしてくれるの?」と。それは住民の人としては言うでしょう。

伊澤 区域外再送信はいろいろ問題がありますけど。ある意味「民民間で」と国は言うでしょうが。そうは言っても、既得権益や営業的な問題があるでしょうから。
芳賀

放送事業者、ケーブルオペレーターの方の営業上の問題と、視聴者のあそこのやつを見たい、ここを見たい、お金を払ってでも見たいんだと。今まで見られていたじゃないかというところの調整をどうしていくかというのは難しい問題です。

そのことも含めて、D-PAの役割としては様々な言いにくいこと、なかなか整理がつかないことも、実態を明らかにしながら色々お知らせする。隠さない。理解を求めていく。

うちが判断して仲裁する必要は全くないわけですから、「こういう目的ですよ」とか「こうすることによって、今後の高度な放送サービスが可能になってくるのですよ」とか。「貴方にとって、メリットとはこういう事になりますよ」とか。「受信方法とかコストもこれくらい掛かりますが、どんどん安くなりますから、その時にご選択を」ということも含め、有りのままを色々ご説明していくしかないですね。


■電波の有効利用のためのデジタル化
伊澤 基本的な、デジタル放送の可能性についてお聞かせ願えますか?
芳賀

まず、やはり電波の有効活用という、いわゆる携帯電話のところの帯域を充分確保したり、国の防災無線なり治安上の必要な通信を充分確保するなり。今後、新しく開発されてくるであろう様々なニュービジネスというか、新しい電波の使い方が出てくる。その時に「一杯で何もできません」と。アメリカもイギリスもフランスも、そういうサービスをドンドンやりますと。しかし、日本は電波が混んでいてにっちもさっちもいきませんというわけにはいかない。技術的にはできる力があるわけですから。でないと、「利用したい」という人は大勢いるのに、「できません」ということになってしまう。

ですから、一定のご負担を掛けたり無理をしても、キチンとした今後のための余裕を作っておかないと、どうにもならないという話しですよね。

「俺はそんなこと知るか! 俺はこれで良いんだ」というお立場もあるけれど、今後のことを考えたら、やはりそういう大局的な物の見方もあるわけです。

それが、このデジタル化の基本的な目的なのですよと。所以なんですよということも、キチンとお話をしないといけない。それをしないと、「国が勝手にやる」とか、「放送局が勝手にやって、何で俺はテレビ買い替えなきゃいけないんだ!」と。

伊澤 昨年あたりは、マンション理事会で改修が議題になって、「2011年になると、国がテレビをくれるんでしょう?」という人がいたようですね。
芳賀 やはりイギリスで地上デジタルの時にSTBを配ったでしょう? そういう事例は世界的にあるわけですよ。それで、新聞などをお読みになって、知識をお持ちの方だと「あそこがやった。日本もやるんじゃないの?」とかおっしゃる方もいらっしゃるのではないかな。
伊澤 富山で2004年に始まりますね。できるところから地上デジタルを始めるということですか?
芳賀

芳賀専務理事基本的に、総務省さんが「できるところから始めて下さい」という言い方をしたことは、事実ではないですかね。進めるときに、その地域の放送局さんができれば一斉にスタートしていく。特にエンジニアリングサービス(ES)というのがありますよね。テレビの受信機は、今度はテレビの受信機+パソコンですから。中にソフトウェアがあり、この機能をバージョンアップしたり、色々変更しなければならない時は、正にアナ・アナ変更では一件一件訪ねるのですが、同じように一件一件訪ねて「ソフトウェアを書き換えさせて下さい」ということはできませんから、全て電波で書き換えていくわけですね。これをやるのに、各放送局が全部自前でやってもいいのですが、そうすると非効率なんです。

例えばメーカーさんが「俺のところで直したい」と言ったら、各放送局、全国128社に全て情報を流して出してもらわなければならないでしょう。大変でしょう?

だから、エンジニアリングサービスは、ここが全て統括をして、そういう信号を作ってもらい「最終的にはNHKの総合テレビと教育テレビに乗せてコントロール波を流し、ダウンロードしましょう」となっているわけです。そうすると、NHKがデジタル化する前に民放さんがやると、ダウンロードするための施設を自前で設備しなければならない。それこそ大変な投資ですよ。それよりは、地元のNHKを口説いて「少し前倒しできない?」と言って。富山の例は、そこを調整して、北日本放送は、確か10月1日ですね。

伊澤 やはりデジタル化、アナログから変えるというのは大変な事業なんですね。
芳賀 でも、僕は素晴らしい話しだと思いますよ。現場で色々なソフトウェアを書き換える、ダウンロードしていくなんていうのはね。
伊澤 先ほどおっしゃったように、韓国も始まっているし、世界からすると遅いほうですものね。
芳賀 フランスも2年以内に始まるし、中国も2年以内の本放送でしょう。北京オリンピックの時は、デジタルハイビジョンをやりたいわけですからね。ああいうところは、始まったら速いですよ。何しろ、あそこの高速道路等は凄いですよね。計画、即着工、完成という感じで(笑)。用地買収の必要なんかないんですものね。強制的に移転させちゃうんですから(笑)。北京オリンピックの時までに、上海の高速鉄道を通すと。「嘘でしょう。時間ないじゃないですか?」と。方式だけ決めたら、後は1メーターづつ土盛りしてアッと言う間にできるという感じの話で。凄い国ですよ(笑)。だから、デジタル化というのは世界の潮流ですよ。どこでも当たり前で、放送は技術革新なんですよね。それが進んでいるのに、「まあ、ここで良いわ」というところと、ドンドン進めていくところでは、長い間経ってみるとサービスの内容に物凄い格差が出て、「あ、それが欲しい!」と言っても、今度は環境整備からはじめるから、なかなか追いつかないという話になるのだろうと。

■HD放送に始まり様々な楽しみ方ができるテレビ
伊澤 そうすると、これから放送番組はほとんどHDになっていくと?
芳賀

そう。ただし、マルチチャンネルの時はHDは全部3チャンネルというわけにいきませんから、525にならざるを得ないですよね。1125ではなくて、やや高画質高精細度+標準とか。組み合わせは色々できると思います。送るコンテンツによって全てハイビジョンにしなければいけないかと言うと、そうでもないでしょうし。色々な都合によって使い分けていけば良いのでしょうから。

もうひとつは、ケーブルさん絡みで言うと、今度のテレビというのは空中波によるデータ放送だけではなくて、実は上り回線を使って放送局が持っている様々なデータを、同一画面上で利用できるわけです。実は、そこは空中波から貰ってくるのではなくて、インターネット経由で局のBMLサーバに繋がり、そこにある大量の詳細情報を大容量で引っ張ってくる。それで、テレビの上にポンと出す。これが、多分今後のデータ放送の利用の仕方では、私は主流になってくると思います。何時でも天気、何時でもニュースくらいは良いですよ。もっと詳しいのを知りたいとか。例えば、学校の教材でもう少し詳しいのを知りたいとか、動画が欲しいと言ったときに、それは大容量でもってこなければ。だから、ちゃんとインターネットを結ぶジャックが付いているわけですからね。

伊澤 サーバ型放送という総務省の研究会ができているようですけれども?
芳賀 サーバ型放送は遠からず実現しますよ。要するに、大容量のサーバが家庭にあれば良いだけの話ですから。しかも、大容量のサーバというのは、長時間、例えば何十時間とか何百時間撮れるというだけではなくて、同時にあそこにはメタ情報。いわゆるインデックス。例えば1時間のうち、インデックスを色々付けていくわけですね。サーバの容量で、「一時間は見にくいな。30分で見たい」といったときには、そこのメタ情報の選び方によって30分でダイジェストしたものとして見られるわけです。それから、今マッチプレーの「アクセンチュアリー・ゴルフ・マッチプレー」とかやっていますが、タイガー・ウッズだけ見たいといったら、タイガー・ウッズのところのメタ情報をチェックすれば、タイガー・ウッズのショットだけを連続して見ることができる。大容量だけではなく、使えるということなんです。
伊澤 NHKの技研でよくやっていましたが。
芳賀 はい。あれがほぼ現実になる。そうなってきたときに、やはりその方が良いでしょうという話しになるじゃないですか? 「凄いね、そこまでいくの!」という話に、遠くない将来なる。ましてや、携帯、今のナビですか? どこを走っていても見られるわけです。何時でも・何処でも・誰でもが、どんな受信端末によっても、必要な情報が入手できます。そのことによって、楽しんだり、共用だったり、非常災害だったり、色々な場面に必要な情報を入手できる。そういう世界が構築されるわけです。
伊澤 使えるテレビ、テレビは総合情報端末になる。一方、PCはブロードバンド化する。このテレビとPCは家庭でどのように使われますかね。携帯もからんできますが。
芳賀

色々なシーンというか、生活の場面毎に様々な機械を使い分けるだろうと思います。例えば、キーボードはちゃんとしていたほうが良いわけですよ。インターネット利用者は、ホームページ作るのだって。お互いにチャットするのだって、ちゃんとしていたほうが。パソコンの方が遥かに便利ですよ。そういう物はパソコンを使う。尚且つ、「ワールドカップが始まった。ちょっと見よう!」と思ったときに、呼び出してみる。それは非常に便利ですよね。だから、これも良いと。

しかし、例えば家族揃って、あるいはソファーでくつろいで、大画面で映画を見たい、サッカーを見たいといったときに、やはりパソコンを眺めているかというよりは楽にして見たいですよね。色々なシーンで、使い分けられてくる。そういう意味では、パソコンに内蔵されているテレビチューナーも無駄になりません。テレビに内蔵されている、パソコン的なソフトも無駄になりません。「重複するじゃないか」と言われれば、一部は重複するでしょうけれども、後はコストの問題になってきますから。

それから携帯性ですね。一番僕が強くなると思うのは、携帯電話でテレビ受信ができること。いざというとき、非常災害時に物凄く有効だと思う。僕は、常に携帯ラジオは持って歩いていますが、ラジオの携帯率というのは高くないんですよ。

しかし、携帯電話の携帯率というのは非常に高いわけでしょう。そうすると、いざというときにそれで、「何処へ逃げればいい? 何が起きてるんだ?」と。安否情報等も、携帯で流すことができますからね。家族は大丈夫か、あるいは親戚は大丈夫かとかを含めて、色々なところに使えるじゃないですか。ここに、僕はちゃんとした情報が流れるということは、これからの社会では不可欠な要素だと思いますよね。

伊澤 今日は、多方面にわたりお話を聞かせていただきまして、どうも有り難うございました。



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